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記念すべき第1回目のDESIGNART Featureに選出されたピエール・シャルパン。
デザインとアートの領域を行き交いながら、次々とエモーショナルな作品を生み出す彼は今年1月、世界最大級のライフスタイル見本市「メゾン・エ・オブジェ2017」(パリ)にてデザイナー・オブ・ザ・イヤーにも輝くなど、世界中からの注目を集めています。ワールド北青山ビルでの東京初個展を控えた彼を、パリ郊外のアトリエに訪ねました。
photographs: Manabu Matsunaga
text: Dai Takeuchi @river
ぜひ東京で自分の作品を発表したい
2015年に京都の『Sfera』で開催した私の展覧会で青木昭夫さん(DESIGNARTの
発起人のひとり)と出会いました。そこから2年経ち、彼から今回の出展要請があ
りました。私がDESIGNART Featureとして招待を受けたことは驚きであり、大変に
光栄に思っています」
を開催することへの感想、そして想いをお聞かせください。
「今回の機会を得たことをとても喜んでいます。過去に京都では展覧会を2回開催
しましたが、それ以来、常々ぜひ東京で自分の作品を発表したいと考えていまし
た。毎日さまざまなイベントがある東京のような巨大都市で展示するのはとてもエ
キサイティングなことだからです。実は、東京の大きさゆえ自分の存在が気づかれ
ないかもしれない、という妄想にワクワクしています」
を開催することへの感想、そして想いをお聞かせください。
「今回の機会を得たことをとても喜んでいます。過去に京都では展覧会を2回開催
しましたが、それ以来、常々ぜひ東京で自分の作品を発表したいと考えていまし
た。毎日さまざまなイベントがある東京のような巨大都市で展示するのはとてもエ
キサイティングなことだからです。実は、東京の大きさゆえ自分の存在が気づかれ
ないかもしれない、という妄想にワクワクしています」
では今回の個展のコンセプトについて教えてください。また最も観てほしいポイントはどこですか?
「今回は、このアトリエにあるものを厳選して展示します。私は1日のほとんどをそれらに囲まれて過ごしているので、まさ
に私のパーソナルな記録といえますね。しかも私の作品、ドローイングやスケッチ、試作品だけではなく、人生のなかで手に
入れたものも含まれます。それらの貴重なオブジェはこのアトリエの棚や壁に飾られているものです。私は今回の展示で披露
したいものを選んだあと、展示台と同サイズのプラットフォームをアトリエの床に再現し、しっくりくるオブジェの配置、対
比、並置に時間を費やしました。それは本物のオブジェを使いつつ本のページを編集する作業をしているようでした。この展
示のためのプラットフォームのセットには、私の経験とデザインを特徴づける、普遍的な領域のアイデアが含まれています」
る展示になっているようですね。
「そう言えるかもしれません。加えて新作も展示します。展示会場となるワールド北青山ビルの広大なガラスファサード一面
に最新のアートワークを施すほか、日本の新しい家具ブランド、TAIYOU & C.のためにデザインした木製の棚をお披露目しま
す。全体としてどんな展示になるのか、あれこれ考えを巡らせながら、オープニングを迎えることをとても楽しみにしていま
す」
アートからデザインの世界への移行はごく自然なこと
がら活動されているのが印象的です。それぞれの活動をする際にその点は意識していますか?
「アーティストとしての教育を受けたので、デザイナーになることへの決心は、まだついていません。ただ、若いころの経験
や出会った人々を通して、アートからデザインの世界へ移行することはごく自然なことでした。私の仕事のやり方はある意味
コンテンポラリーアーティストに近くて、デザインのドローイングを始めるための概要や説明などは必要なく、いつも物体を
まるで物体になる前の形状であるかのように観察しています。そしてアーティスト的な訓練を受けてきたにもかかわらず、私
はまず自身をデザイナーと見なしています。なぜなら私がデザインしたほとんどのものは適切で明確な使い方ができ、たとえ
それが曖昧だったとしても実用が可能です。アートには、こういった形と意味をつくり上げるためのアリバイは必要ありませ
ん」
のなかでもアートピースを発表していらっしゃいます。それらにはより強いアート要素が感じられますが、その点はどう考え
ていますか?
「私は作業プロセスの段階で一点ものと量産品の間に序列をつくりたくありません。私にとって大切なことは、取り組むデザ
イン文脈のなかでどのように自分らしくあるか、ということです。どのような文脈であれ、私は同じ厳格さをもって仕事に臨
むようにしています」
幅広い層に向けて展示できるのはとても刺激的
エルメスのためにデザインした新作がもうすぐ発表されますし、現在はパリの
『ギャラリー・クレオ』のための新しいプロジェクトが進行中です。また、少しイ
ンダストリアルデザイン寄りになりますが、イタリアのブランドCeramiche
Piemmeからセラミックの装飾タイルがこの秋発表されます。日本ということな
ら、陶磁器メーカー、1616/ Arita Japanからも食器のコレクションが近日発表にな
りますし、さきほどお話しした日本の家具ブランドTAIYOU & C.の棚のデザイン
を、そして今回の展示会場のアートワークで使用する和信化学工業の新商品塗料
『BELAY』についてはカラーディレクションを手がけています」
「私の作品を観たことのない幅広い層に向けて展示できるのはとても刺激的ですね。私は過去の日本での展示経験から、日本人は欧米人とは異なる反応をすることに気がつきました。彼らは気に入ったものをじっくり観察して、驚きや喜びを表す傾向にあることがわかりました。私はそのことをとても興味深く感じています」
予期せぬ出会いを、ただ楽しみにしています
「私にはまだあまり親しみのない巨大都市ですが、一方で小さな村の集合体のようにも思えて、それほど広大には感じていません。東京の風景はそれぞれまったく違うので、滞在中にいろいろなエリアを散策するのが楽しみです。画一的なパリの街並みとは違いますね」
東京のことを詳しくは知らないので、街の新しい部分を発見できるといいなと思っています。私は仕事などの目的がある旅が好きです。共感できる人や場所に出会えるからです。それゆえ同じ都市を何度も訪れる場合は、お気に入りの場所を再訪するという癖があります。なぜなら、行ったことのない場所へ物見遊山で訪れる典型的な旅行と呼ばれるものに興味がないからです」
「オブジェと建築物といったスケール感の違うものを同じイベントで観せるのはいいアイデアですね。私にとってこのふたつの領域は切り離すことができないものです。そして来場者にとっても、街中の違った場所を発見できるいい機会となるでしょう」
「私は、未来に対していかなる特別なファンタジーも抱いていません。ただ、予期せぬ出会いには心が踊ります。知らない人に呼び止められて、私が想像していなかったりまだ描いたことのない何かを描いてほしいといった依頼を受けるようなことに興味があります。私の未来については、10月6日に大阪行きの飛行機に乗って10月13日から18日まで東京に滞在すること、そしてDESIGNARTで私の展覧会が16日から開催されることだけを知っています。そしてそこでの予期せぬ出会いを、ただ楽しみにしています」
work
彼のアトリエさながらに展示されます。
彼ならではの柔らかな造形と色彩にあふれたユニークな作品の数々。
そのほんの一部を、ここでご紹介しましょう。
今回のアートワークを支える日本製の“ 塗ってはがせる塗料”
る新商品塗料「BELAY(ビレイ)」のカラーディレクションを手がけました。
この種類の仕事は、彼にとって初めての挑戦でした。シャルパン氏は今回の作業についてこう語っています。
「BELAY の色調は私のデザインから取った色を発展させたもので、私のすべてのインスピレーションとこのシリーズはリンクしています」。つまり今回の展示は、彼特有の色彩感覚がそのまま表現されるアートワークといえます。ぜひ会場で確かめてみてください。なお、塗ってはがせる保護のためのまったく新しいコンセプトの塗料BELAY
は、カラーキット (6 色入り) をDESIGNART で先行販売します。