PIERRE CHARPIN INTERVIEW
DATE:2018年3月27日 Artist INTERVIEW
アートとデザインの境界を越えて

information

記念すべき第1回目のDESIGNART Featureに選出されたピエール・シャルパン。 デザインとアートの領域を行き交いながら、次々とエモーショナルな作品を生み出す彼は今年1月、世界最大級のライフスタイル見本市「メゾン・エ・オブジェ2017」(パリ)にてデザイナー・オブ・ザ・イヤーにも輝くなど、世界中からの注目を集めています。ワールド北青山ビルでの東京初個展を控えた彼を、パリ郊外のアトリエに訪ねました。
photographs: Manabu Matsunaga
text: Dai Takeuchi @river

ぜひ東京で自分の作品を発表したい

──記念すべき第1回目のDESIGNARTにおいてフィーチャーされ、東京で初の個展
を開催することへの感想、そして想いをお聞かせください。

「今回の機会を得たことをとても喜んでいます。過去に京都では展覧会を2回開催
しましたが、それ以来、常々ぜひ東京で自分の作品を発表したいと考えていまし
た。毎日さまざまなイベントがある東京のような巨大都市で展示するのはとてもエ
キサイティングなことだからです。実は、東京の大きさゆえ自分の存在が気づかれ
ないかもしれない、という妄想にワクワクしています」

──ユニークな妄想ですね。いえいえ、メインでフィーチャーされますから間違いなく注目されますよ。
では今回の個展のコンセプトについて教えてください。また最も観てほしいポイントはどこですか?

「今回は、このアトリエにあるものを厳選して展示します。私は1日のほとんどをそれらに囲まれて過ごしているので、まさ
に私のパーソナルな記録といえますね。しかも私の作品、ドローイングやスケッチ、試作品だけではなく、人生のなかで手に
入れたものも含まれます。それらの貴重なオブジェはこのアトリエの棚や壁に飾られているものです。私は今回の展示で披露
したいものを選んだあと、展示台と同サイズのプラットフォームをアトリエの床に再現し、しっくりくるオブジェの配置、対
比、並置に時間を費やしました。それは本物のオブジェを使いつつ本のページを編集する作業をしているようでした。この展
示のためのプラットフォームのセットには、私の経験とデザインを特徴づける、普遍的な領域のアイデアが含まれています」

──つまり、今回はピエール・シャルパンのクリエイターとしての側面だけでなく、人となりそのものを体感することができ
る展示になっているようですね。

「そう言えるかもしれません。加えて新作も展示します。展示会場となるワールド北青山ビルの広大なガラスファサード一面
に最新のアートワークを施すほか、日本の新しい家具ブランド、TAIYOU & C.のためにデザインした木製の棚をお披露目しま
す。全体としてどんな展示になるのか、あれこれ考えを巡らせながら、オープニングを迎えることをとても楽しみにしていま
す」

アートからデザインの世界への移行はごく自然なこと

──デザイナー、アーティスト、シノグラファーなどさまざまな肩書きをもち、デザインとアートの境界を自在に行き来しな
がら活動されているのが印象的です。それぞれの活動をする際にその点は意識していますか?

「アーティストとしての教育を受けたので、デザイナーになることへの決心は、まだついていません。ただ、若いころの経験
や出会った人々を通して、アートからデザインの世界へ移行することはごく自然なことでした。私の仕事のやり方はある意味
コンテンポラリーアーティストに近くて、デザインのドローイングを始めるための概要や説明などは必要なく、いつも物体を
まるで物体になる前の形状であるかのように観察しています。そしてアーティスト的な訓練を受けてきたにもかかわらず、私
はまず自身をデザイナーと見なしています。なぜなら私がデザインしたほとんどのものは適切で明確な使い方ができ、たとえ
それが曖昧だったとしても実用が可能です。アートには、こういった形と意味をつくり上げるためのアリバイは必要ありませ
ん」

──デザインとアートの領域を超越したところに立脚されているのがよくわかりますね。ところで、デザイナーとしての活動
のなかでもアートピースを発表していらっしゃいます。それらにはより強いアート要素が感じられますが、その点はどう考え
ていますか?

「私は作業プロセスの段階で一点ものと量産品の間に序列をつくりたくありません。私にとって大切なことは、取り組むデザ
イン文脈のなかでどのように自分らしくあるか、ということです。どのような文脈であれ、私は同じ厳格さをもって仕事に臨
むようにしています」

TOP
-->