Perrier Jouet Interview "POWER OF DESIGN"
DATE:2020年9月30日 2020 INTERVIEW

デザインは継続可能な社会に貢献し、豊かな未来をつくる鍵になる

エコロジーと環境は、いまや政治と経済を語るうえで不可欠なキーワード。
伝統に学ぶ老舗シャンパーニュ メゾン、ペリエ ジュエは「美」をもとに未来の課題に取り組んでいます。

Words: Keiko Sumino-Leblanc
Photos: Manabu Matsunaga

メゾンの礎は、自然とアート

2020年秋、伝統を重んじるシャンパーニュの世界に、新たな風が吹き込まれます。
白一色で実現されたペリエ ジュエのエコロジカルボックスは、見た目の斬新さもさることながら、
“100%再生可能な紙”を使用したギフトボックスという画期的なアプローチによって誕生しました。

これまでも環境に配慮したギフトボックスを採用するシャンパーニュ メゾンはありましたが、
期間限定の一過性のものというのがほとんど。それに対してペリエ ジュエでは、今回発表した
「グラン ブリュット」「ブラゾン ロゼ」「ブラン・ド・ブラン」の3銘柄を皮切りに、2年後の
2022年にはメゾンのすべてのギフトボックスを環境コンシャスに切り替えると公表しています。

今なぜエコロジーなのか

シャンパーニュの老舗メゾンが、なぜいまエコロジーなのでしょうか? 同メゾンのクリエイティブディレクター、
アクセル・ド・ビュフェヴァンに話をうかがいました。「エコロジーとは、つまり“自然を大切にする”ということ。時代の移り変わり
とともに言い回しが変化しただけで、1811年の創業以来、自然はメゾンにとって最も大切にしているもののひとつです。
これは創業者のピエール=ニコラ・ペリエが植物学者であったことからも、おわかりいただけると思います。
自然を尊重し、アートを愛するフィロソフィーは、創業当時からメゾンに脈々と続く伝統であり、
いわばペリエ ジュエの重要なヘリテージなのです」

自然とアート––––それはペリエ ジュエにおけるエコロジーとデザインの密接な関係性を示唆しています。

エコロジカル ボックスをデザインするにあたり、わたしたちはシャンパーニュづくりで最も重要な“土壌”を表現することを目指しました。

シャンパーニュ地方の土壌は、ご存じのとおり白亜です。この色合いだけでなく、
チョーク質特有のパウダリーな手触りを再現していることも、このボックスの斬新なポイントです」

手触りをデザインする、とは少し突飛なアイデアにも感じますが、弾ける泡を特徴とするシャンパーニュは、ワインよりもさらに五感で楽しむ飲み物という側面があります。触感をデザインに取り入れたエコロジカル ボックスは、この五感を意識させる点において
実にシャンパーニュ的であり、メゾンに息づくアートの精神がなければ生まれなかったのかもしれません。

シャンパーニュ醸造で“タッチ”にこだわる理由

では、手触りをデザインしたいという発想にどうやってたどり着いたのでしょうか?
「こうした一連のアイデアは、醸造責任者のセヴリーヌ・フレルソンとの対話によって育まれました。彼女はシャンパーニュづくりのあらゆる過程で、畑の土の手触りやブドウの葉の感触など、“タッチ”という表現をとても頻繁に用いるのです」

色や香り、味わいだけでなく、手触りさえも……。
醸造責任者のセヴリーヌ・フレルソンは、シャンパーニュ醸造で“タッチ”にこだわる理由をこう説明します。

「今朝も出勤前に葡萄畑に立ち寄って、葡萄の葉や枝に触れ、香りや色を感じてきたところです。
これはわたしの日課。自然との日常的な触れ合いなくして、シャンパーニュづくりはありえません。
ペリエ ジュエといえば、アールヌーボーの巨匠エミール・ガレが19世紀にデザインしたアネモネモチーフの
ボトルを思い浮かべる人も多いかもしれません。花、つまり自然がメゾンのエンブレムであることからも、
ペリエ ジュエにとっていかに環境が中心的存在であったかを、読み取ることができると思います」

セヴリーヌ・フレルソンは笑顔で続けます。

「創業者のピエール・ニコラ・ペリエは植物学者として、メゾンの敷地内に温室を所有していました。彼にとってそうだったように、
自然はわたし自身のシャンパーニュづくりにおいて非常に重要です。なぜなら自然を尊重することが、そのままシャンパーニュのクオリティに直結しているから。
今回のエコロジカル ボックスは、自然へのリスペクトと同時に、ペリエ ジュエのシャンパーニュのピュアな存在感を具現化していると感じています」

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