INTERVIEWS
株式会社インターオフィスCEO寺田尚樹氏
SPECIAL INTERVIEW | Muuto POP-UP STORE
New Perspective on Scandinavian Design DESIGNART TOKYO 2023にてPOPUPSTOREをオープンするMuuto。ブランドを展開する株式会社インターオフィスCEOの寺田尚樹氏にその魅力をお聞きしました。 ”New Perspectives on Scandinavian Design”をキーワードに2006年デンマーク・コペンハーゲンで設立されたブランド「Muuto(ムート)」。スカンジナビアンデザインの特徴でもある機能性やクラフトマンシップを礎に、素材開発や先進技術の採用、大胆な創造的思考を掛け合わせることで新しい北欧スタイルを提案しています。現在では巨匠と呼ばれる、ポール・ケアホルムやアルネ・ヤコブセンなどによる北欧名作家具が世界的な人気を誇っていた60年代以降、ある意味停滞気味だったとも言える北欧デザイン界に風穴をあける勢いのあるブランドとして、国際的にも評価が高まっています。 「Muuto」 とは、フィンランド語で新しい視点を意味する muutos(ムートス) に由来しています。デンマークブランドにも関わらずフィンランド語が採用された背景には、創業者のパートナーの存在があるという逸話も。一流デザイナーを国内外から起用し、肩肘張らないコンテンポラリーな北欧スタイルにまとめ上げるディレクション力は、現代の暮らしに新しい視座を与えてくれます。 ブランドの始まりのアイテム「E27」は、ソケットとコードを同色のシリコンで仕上げた裸電球が主役の照明。電球の口径サイズ「E27」がそのまま商品名となっています。カラフルなコードが空間に垂直のラインを描き、新しい景色を作り出します。単体使いであればポップに、複数使いすればシャンデリアのように面使いもできる汎用性が魅力です。 「アンフォルド ペンダントランプ」は、工場などで使われているインダストリアルランプを再解釈した照明。本来アルミや琺瑯が多いシェードをシリコン製にすることで、畳めてフラットパックにでき配送時の環境負荷を軽減します。ダイニングに低めに吊るして頭をぶつけても痛くないという優しさも。付属の半透明なアクリルカバーをシェード底部に取り付けることで、柔らかな印象の明るさを得られます。 「レストアバスケット」は、シンプルな構造で自立するフェルトのバスケット。素材の一部に再生ペットボトルから抽出した繊維を使用しています。愛嬌のあるデザインは、単体でも重ねて置いてもインテリアとして成立する魅力があります。 「ファイバーチェア」は、素材の25%ウッドチップが混ざっている樹脂で作られたシンプルな椅子。素材開発から手がけており、よく見ると木の粒が表情豊かで一つとして同じものはありません。やはり家具には木が馴染みます。また木の端材を安易に燃料使いしてしまうのではなく、素材として活かして使うというサスティナブルな視点も。 ブランドに関わっているデザイナーの中でも、プロダクトと合わせて是非注目していただきたいのは、トーマス・ベンゼンの「カバーアームチェア」と、セシリエ・マンツの「ワークショップチェア」です。
トーマス・ベンゼンの「カバーアームチェア」
トーマス・ベンゼンは、デンマーク出身のデザイナー。「Muuto」の中で最も多くの作品をデザインしており、数年間ブランドディクターも務めていました。彼は、元々は建築に興味を持って学んでいたのですが、家具に方向転換しました。その際デンマークの伝統のマイスター制度に従い自分で実際に椅子を作れるようになる修行をしたそうです。 アーム部分をカバーしている成形合板*のパーツが見どころ。機械で曲げられる限界の最小径のカーブで作られたパーツが、前脚と後ろ脚と背板をカバーし構造の要になっています。これは自ら手を動かして作れる人だからこそできたデザイン。またブランドの技術力の高さを示している美しい椅子です。
*何層にも重ねた合板を蒸気で熱して曲げながら圧着する技術
セシリエ・マンツの「ワークショップチェア」
セシリエ・マンツはデンマーク人の女性デザイナー。ご両親ともアーティストという家庭で育ち、実は幼少期に日本で暮らしていたことがあります。彼女からもデンマークと日本の融合という話を聞いたことがあるのですが、とてもよく考えられた静かなディテールが彼女のプロダクトの心地よさを作り出しています。こちらの「ワークショップチェア」のような椅子を作るというのは、実は簡単なように見えて、魅力的なデザインにをすることはとても難しい。例えば座面の前脚との接合部分や、座面後ろのカーブ、に背板の優しい曲面などに彼女の繊細な感覚を見て取れます。 「Muuto」の世界観を体験できる期間限定のポップアップストアでは、フラワーベースやインテリアアクセサリーなど手に取りやすいアイテムも多く取り揃えています。まずは小さなものから暮らしに取り入れてみて、他のアイテムをゆっくり買い足していくのもおすすめ。木製の美しいインテリアアイテムは勿論、落ち着いたトーンの色味はどれを組み合わせても失敗なく馴染むので今の暮らしにしっくりくる北欧スタイルのインテリアを、誰でも簡単に作ることができます。是非実際に足を運んでみていただければ光栄です。
Text : Yoko Dobashi
Photo : Yosuke Owashi
Muuto POP-UP STOREの詳細はこちらからご覧いただけます。
VIDEO
SPECIAL INTERVIEW | Muuto POP-UP STORE
BRAND / CREATOR
ムート
ムートは、2006年に設立されたコペンハーゲン発の家具メーカー。ムートという名前はフィンランド語で "新たな視点" や "変化" を意味する「muutos(ムートス)」 に由来し、スカンジナビアデザインの新しい視点を取り入れたプロダクトを提案しています。セシリエ・マンツやトーマス・ベンゼン、アンデルセン&ヴォル、TAFスタジオなど、最前線で活躍する北欧のデザイナーを起用するムートは、あたたかみのある伝統的な北欧デザインと、大胆な発想が加わった先進的な技術、素材使いでモダンデザイン界に新風を巻き起こし、国際的にも高い評価を得ています。
https://www.muuto.com/
セシリエ・マンツ
芸術家の両親を持つセシリエ・マンツ(Cecilie Manz)は、コペンハーゲンで生まれました。幼少期は陶芸家の母親ボディル・マンツ(Bodil Manz)と佐賀県有田で過ごした時期もあり、クリエイティブな環境で育ちました。マンツはデンマーク王立芸術アカデミーで学んだあと、ヘルシンキ芸術デザイン大学に留学。帰国後は自身の会社を設立し、詩的センスに満ちたミニマルなデザインを発表しています。2014年には、デンマークで最も貢献した文化人に授与される「Crown Prince Couple’s Culture Prize」をデザイナーとして初めて受賞しています。ムートでは、ワークショップチェア&テーブル、コンパイルシェルビングシステムなどの家具のデザインを手掛けています。
https://www.muuto.com/content/designer/cecilie-manz/
トーマス・ベンゼン
デンマーク出身のトーマス・ベンゼン(Thomas Bentzen)は、ルイス・キャンベルのデザインスタジオで経験を積んだあと、2010年に自身のスタジオ「Thomas Bentzen Industrial Design」をコペンハーゲンに設立しました。彼の作品は、シンプルさ、合理性、機能性が特徴。シンプルで明確なストーリー性のあるデザインで、北欧デザインに新たな息吹をもたらしています。ムートでは、デザインディレクターを務めたこともあり、カバーチェア、アラウンドコーヒーテーブルといった家具からスケッチツールボックスのような小物まで、幅広くデザインしています。
https://www.muuto.com/content/designer/thomas-bentzen/
株式会社インターオフィス
インターオフィスは、1983年の創業以来、約40年にわたり、ハイクオリティな空間と家具を豊富な実績と経験によって提供してきました。「良いデザインは良い人を生み出す、また良い人が良いデザインを生み出す= “Good Design is Good People”」をコーポレートスローガンとしてかかげ、住空間、オフィスやホテル、公共施設や商業施設に至るまで、上質な家具とともに、上質な空間をトータルで提案します。
人々により良いデザインのプロダクトや家具を提供し、それに触れていただく。また、良いデザインの空間を創造しその空間に身を置いていただくことで、より良い生活を伝え、より良い社会=Good Societyをつくっていくことが、私たちインターオフィスの変わらない使命です。
https://www.interoffice.co.jp/