自然的要素における化学的および物理的反応だけを利用したA.Kassenの「Bronze Pour」シリーズは、高温の液状ブロンズを少量、直接水の中に注ぎ入れて作ります。水に触れた際にブロンズが冷却され、前もって予測することが不可能な、意外性のある小さな形を作ります。これをスキャンし、拡大してブロンズで鋳造します。その過程に、アーティストの手が関わることはないのです。必然的に抽象的なものが出来上がりますが、参照物の特徴は残しているので、彼らの想像の源となったものを即座に考え、探し当てる助けになります。現代彫刻を思わせる「Bronze Pour L」は、曖昧さに加え有機的造形としての性質も持っています。
代表的なシリーズのひとつである「White Paintings」では、ホワイトの油絵具の層が背景を部分的に隠し、色の閃きを浮かび上がらせています。またキャンバスにシルクスクリーンでコラージュを施したり、軟鋼、メッシュ、ボクシングの道具を使って彫刻を制作するなど、作品ごとにストーリーがあります。そこに共通するのは、表現の要素、形態や技術 の洗練の中に個性を求める姿勢です。作品タイトルの多くは、2015 年に友人である文筆家ポール・ヴァッサーマンと共著した詩集「The Price You Pay For Not Being Alone With Your Dying」(死に瀕して一人ではないことへの代償)からとったものです。