エコロジー：循環をめぐるダイアローグ 「新たな生」崔在銀（チェ・ジェウン）展 | 銀座メゾンエルメス フォーラム

エルメス財団は、アートにおけるエコロジーの実践を問う「エコロジー：循環をめぐるダイアローグ」展を開催します。

地球規模の気候変動への取り組みは、私たちが直面するエコロジーの喫緊の課題として、生態学的、経済的、社会的要求の間の均衡などをもたらしています。それらの問題に私たちはどのようにアートを通じて考察してゆけばよいでしょうか。銀座メゾンエルメス フォーラムでは、エコロジーの概念を広義の循環するエネルギーの有り様として捉え、地球環境におけるつかの間の漂いである人間の生やモノについて、自然との関わりからアプローチするアーティストを紹介いたします。

ダイアローグ １の「新たな生」崔在銀（チェ・ジェウン）展では、環境や自然との対話を継続してきた一人の作家、崔在銀（チェ・ジェウン、1953年韓国・ソウル生まれ）の40年に亘る実践を個展形式で振り返ります。崔は1976 年の来日を機に生け花と出会い、草月流三代目家元、勅使河原宏への師事を経た後、1980年以降アート作品の制作を続けています。
本展は、生存に関わる自然生態系の真実を直視しながら、自然との理想的な共存関係を再構築するプロセスとして、崔の過去作と新作を織り交ぜながらご紹介します。代表的な現行のプロジェクトである世界7カ国に和紙を埋めたのち時を経て掘り起こし、時間を表す「World Underground Project」、朝鮮半島を南北に隔てる非武装地帯DMZで人間のアクセスが禁止されたがゆえに自然の自己組織(self organization)だけを通じて実現された生態系を未来のビジョンとして、破壊された森を復元させる計画「Dreaming of Earth project」をはじめ、白いサンゴを用いた新作「White Death」では、切迫した環境危機の様相を静かに映し出します。緊急事態への警告と静かな詩情を併せ持ち、生に潜在する暴力と美の振れ幅の中で、自然との理想的な共存関係を通して希望を探求します。
それぞれの時代の問題意識を反映しながらも、深い洞察に基づく独自の活動を続けてきた一人の作家の視点を通じてエコロジーの問題を振り返ることで、作品の中を循環する時間、有限無限の生命といったアートが問い続ける普遍的な問いが、等身大の対話として思索されるでしょう。