INTERVIEWS
高機能ゆえに黒子になりがちな素材『TAFNEX』を主役に
TAFNEX by MITSUI CHEMICALS, INC. × JUNICHIRO YOKOTA STUDIO
高機能ゆえに黒子になりがちな素材『TAFNEX』を主役に
『TAFNEX』は、“軽くて耐水・耐薬品性に優れ、固くて、強い”という特徴を持つ素材。オレフィン変性技術に関し世界屈指の技術を誇る三井化学が、コア技術でもあるポリプロピレンに炭素繊維の特徴を掛け合わせることで新たなニーズが期待できると予想し、2014年に開発を始めたものです。炭素繊維の糸にポリプロピレンという樹脂を含浸(一体化)させる研究段階から、ある程度技術が確立され生産できるようになり、市場に展開できる品質に磨き上げるのに7.8年を要したそう。
幅広く素材の可能性を探る中で、「“縁の下の力持ち”のように扱われがちな『TAFNEX』を、主役級に持ち上げたい」という想いから、目に触れる使い方で素材を活かしてくれそうなデザイナーを探していた市場開発担当の渡部氏。2021年秋のインテリア関連のイベントで横田氏が発表していた作品を見て運命的なものを感じ、声をかけて生まれたのが今回デザイナートで初公開されるベンチとスツールです。
『TAFNEX』の繊細な一面、美しさやルーツをデザインで紐解く
声をかけられた横田氏は、「素材にフィーチャーしてものづくりに取り組む、ということに純粋にワクワクしました。」と語ってくれました。「第一印象は、黒いな!という驚き。炭素が光に当たってキラキラしているのが美しいと感じました。その上タフでもあり、いい意味で素材の特性が“渋滞している”(笑)。それらをひとつひとつデザインで紐解いて、皆さんに『TAFNEX』を知ってもらいたい、と考えました。」
ベンチとスツールは、ともに二枚の同じ形が反転して重ねられた形状をしています。一枚では二点でしか着地していないため自立しない部材を、レイヤー状に重ねることで支え合って機能するデザイン。それはレイヤーになって初めて成り立つ素材の特徴や製法と同じだとか。ポリプロピレンと炭素繊維を一体化させて、テープ状にしたものを切って、板状に加工し、それをさらに成形していく、その丁寧なプロセスをなぞるようにルーツを形にしています。製作工程で出る端材も集めてチップにして一体化した上で成形されており、材料を無駄にしない環境に優しいものづくりに取り組んだ結果、それらがキラキラと反射して表面に繊細な表情を与えているのも魅力のひとつ。「今後は廃棄のところまでデザイナーや素材メーカーが提案していく世の中になるのではないでしょうか?」とも語ってくれました。
休憩がてら座ることで素材を体験
製品開発パートナーとして声がけをされた段階では、「『TAFNEX』を使ってくれれば、作るものは何でもいい」と限定されてない状況だったそう。まずは「知ってもらうこと」を目標に、ハードルをいかに低くして体験してもらうか?に焦点をあて、意識することなく素材に触れて使ってもらえる「座れるもの」として、動作に寄り添う形でベンチ・スツールが開発されました。
「いい素材でも、ものとの相性が悪かったら製品化には至らないということは多々ある。」と語る横田氏は、メーカー勤務時代に素材メーカーの持ち込む新素材が“作っているものに適していなかったら採用されない”という現場を見てこられました。だからこそ今回のいわば逆再生のようなプロセスそのものを楽しまれたとか。
様々な視点からのフィードバックが期待できる場としてデザイナートで初公開される『TAFNEX』のベンチとスツール。最後に来場者の皆さんへの一言「本会場にいらした方も外から見るだけでなく、ぜひガラス越しの裏側にあるので休憩がてら座って体感してみてください。」とのこと。素材開発からのデザインへの取り組みは海外で受け入れられる可能性が非常に高く、『TAFNEX』は今後国内外でベンチとスツールをきっかけにいろんな展開をしていく予定です。皆様の声をきっかけに、新しい製品開発が行われるかもしれませんね。
Text: 土橋陽子
Photo:宇佐美亮
*TAFNEXは三井化学㈱の登録商標です
BRAND / CREATOR
TAFNEX® / 三井化学株式会社
世の中を驚かせたり、快適にしたりするアイデアは、きっと思い切った発想の転換から生まれてくるのだと思います。そして、アイデアは、人の数だけ生まれ、そのすべてが未来を変える力につながっています。
三井化学は、100年を超え、時代とともに変化し続けてきました。これからも未来を見つめ、地球環境と調和を図りながら、変革を生み出していきます。
0→1 MAKE IT HAPPEN ゼロからイチを生み出す化学の力でイチからムゲンを実現し、未来へのソリューションを提供します。
http://jp.mitsuichemicals.com/jp/special/tafnex/
横田 純一郎 / JUNICHIRO YOKOTA STUDIO
オランダDesign Academy Eindhoven留学後、デザインオフィス、大手電機メーカーを経てJUNICHIRO YOKOTA STUDIOを設立。
日用品から電化製品までプロダクトを中心に戦略開発からアウトプットまで一貫したデザイン活動を行っている。
クライアントが抱えている課題を解決するだけでなく、固定概念にとらわれない視点や手法を積極的に取り入れる事で新たな発見や価値の創出を日々探求しながら活動している。
http://junichiroyokota.com