オフィシャルエキシビション「Reframing」展の空間デザインを手がけた「HYBE Design Team」。アート/ デザイン/ クラフト/ テクノロジーと、ジャンルの異なるエキスパートらがキュレーションする作品群を、どのようにプレゼンテーションすべくデザインしたのでしょうか。代表である竹田純氏にインタビューしました。

―本展のタイトルは、「DESIGNART TOKYO 2024」のメインテーマと同じ「Reframing」ですね。空間デザインの構想はどのようにスタートしたのでしょうか。

まず最初にキュレーターの皆さんとお会いし、それぞれが「Reframing」をどんな想いでとらえ、キュレーションしようと考えているのか、ヒアリングさせてもらいました。
もちろん視点やプランがそれぞれ異なっていましたが、ある種、共通するところも見えてきましたし、本当にさまざまなインスピレーションを得られたので、それをふまえて設計していきました。
我々は「Reframing」展を、‟現代を見直しながら未来を考察していく試み”、ととらえつつ、できるだけシンプルな空間で、訪れた方々それぞれが思考を巡らせたり、そういうことか、と気づきにつなげてもらえるような場をイメージしています。

―今回のプランは、再生素材がポイントだと伺いました。

はい、ヒアリングしていく中で、‟再生素材を無垢の状態で用いる“というアイデアが生まれました。
そもそも再生素材は、私たちの生活のありとあらゆるところに使われています。イメージしやすい例を挙げると、使用済みのペットボトルが原料になっている化学繊維の衣類や、世の中に出回っている鉄も、ほぼ再生素材と言っていいでしょう。
ただ、空間を設計する我々や建築業界では、再生素材というと限られた形状や寸法でしか流通していないのが現状です。それを今回、"無垢の状態" と表現していますが、現状の再生素材をベースに、新たなスタンダードになり得るようなものを生み出すチャレンジに取り組みました。
本展の空間を体感していただく中で、例えば、建築家やインテリアの設計に関わる方々が、こんなに無垢のものがあるのか！と、いい意味で勘違いしてもらえたり、素材メーカーの方々との間で、これまでになかった新しい素材の開発や展開、協業につながったら、と。また、プロダクトデザイナーやアーティストなど幅広いクリエイターの方々に、デザインのヒントや発想のきっかけにしてもらえたら嬉しいですね。

―キュレーションされた作品群と空間のコラボレーションもとても楽しみです。

そうですね。例えば、会場の全⾯ガラスのファサードを活かして、アートコレクティブの「The TEA-ROOM」による《SOTOROJI》という、QRコードを使った作品を展示しています。その場に生まれるであろう木漏れ日のような光のゆらぎから、まるでデジタルとリアルの間を行き来するようなイメージを体感してもらえるでしょう。
このアイデアも、キュレーターの皆さんとの会話から生まれていますが、我々HYBE Design Teamが大切にしている、ハイブリッドな視点や思考からのアウトプットや、時間軸を超えて今を表現したい、という想いとも一致していますね。

―東京ミッドタウンのイセタンサローネでは、HYBE Design Teamとしてのプレゼンテーションも実施していますね。

はい。今年の「ミラノ・サローネ」でインスタレーションを行いましたが、国内では初めての取り組みです。
テーマは、プロダクトの用途やルールのようなものを、ほんの少し変換したり視点を変えたりすることで、物事の思考や可能性を拡張させて生まれる、新たな価値や使い方。イセタンサローネの2フロア全体を新たな空気感へと変身させる試みができたら、と、国内外で活躍する幅広いクリエイターやアーティストらに声をかけました。これまでも共にチームとして活動してきた、Dioramaや未来創作所、Filaments、Reset、畑萬陶苑、叢（くさむら）など、本当に幅広い仲間と共に作り上げています。

DESIGNART TOKYOを訪れる世界中の方々に、HYBE Design Teamっていう面白いチームがいるんだ、と、シンプルかつ少しパンチの効いたメッセージが届けられたら、と期待しています。

Text: Naomi Nakamura