INTERVIEWS

SPECIAL INTERVIEW | bathtope by LIXIL

たためる浴槽で叶える、自由な暮らしと極上の入浴体験

世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的な水まわり製品と建材製品を開発、提供する「LIXIL(リクシル)」。2024年、100周年を迎える水まわり・タイル事業は、次の100年を見据えた「bathtope(バストープ)」をDESIGNART TOKYO 2024で発表します。
「bathtope」とは、布製の浴槽を取り外しすることで、コンパクトな浴室空間でも広々と使えるバスルームとシャワーブースの中間のような位置づけのシステムバス。忙しい日にはシャワーで効率性を、休日にはお湯に包まれる極上の入浴体験を叶えてくれます。より地球に優しく“自分らしい”暮らしを実現できる選択肢として、柔軟な姿勢で商品開発に取り組んでいるデザインチームを中心としたプロジェクトメンバーの方に、コンセプトの源や今後の展開などのお話を伺いました。

浴室空間を開放し、多様なライフスタイルに寄り添いたい

―開発のきっかけを教えてください。
長瀬さん(以下敬称略)「浴室は1日の中でせいぜい1時間とか短い時間しか使われない空間ですよね。趣味を愉しんだり、オンライン会議をしたり、もっと長い時間使ってもらえないかなと思った時に、浴槽をもっと“気軽な存在”にできないかと考えました。自分で浴槽を取り外しすることで、スペースの効率性に加えて入浴に対する意識づけも変わるのではないかと。平日の忙しい日はシャワーで済ませて効率性を、日曜日などのゆったりとした時には日光浴やキャンプに出かける感覚で“ファブリックバスに包まれる豊かさ”を楽しんでもらえたら、という想いがあります。『haretoke(ハレとケ)』という名前で、西澤さん・今村さんと社内コンペに4つほど出したアイデアの中の一つで、最優秀のテーマとして選ばれ事業化の運びとなりました。」
西澤さん(以下敬称略)「お風呂場って戸建だと大体は北側に配置されて、『カビている』とか『ジメジメしている』といったイメージを持たれる方が多い。それを、もっとリビングのようにくつろげる空間にならないものか、浴室空間を開放したいと考えました。
お風呂の“bath”と、多種多様な生物の受け皿の“biotope (ビオトープ)”をかけた造語『bathtope』という名前にも思い入れがあります。tope (トープ)というのは“topos (トポス)”という場所を表すギリシャ語からきていて、ライフスタイルが多様化して変化した入浴習慣を受け止める新しい場所としての提案をしています。」
―新しい提案を具現化した商品をする立場から見て、第一印象は?
小栗さん(以下敬称略)「まず最初に『あ、本当に(わが社で)商品化できるんだ!』と、驚きました。(笑)
私自身年間通してほとんどシャワー、一人暮らしなので浴槽も小さいしそんなに使わないのに無駄だなぁと思っていたところに出てきた解決策。まさに欲しいな!と思う商品でした。」

入浴前の不安を一掃する、浮遊感のある極上の入浴体験

小栗「とはいえ、正直実現は難しいかな?と見ていました。それが変わったのは社内モニターで入浴体験をした時です。思ったより普通に入れる。さらに試作を重ねるごとに入浴感が良くなり、社内でも試しに入ってくれた人の感想を聞いて『イケる!』と確信しました。」

今村さん(以下敬称略)「みなさんハンモック構造なので不安がられるのですが、お湯が入るとお湯の重量でテンションが掛かりカチカチになって割とちゃんとしたバスタブになってくれます。それでいてハンモック構造なので首や肩周りは柔らかく受け止めてもらえます。社内モニターもたくさんの方にお願いして、入る前は『こんな不安定なのダメだろ。』 と言っていた方が、入ると『すごいよかったよ。』と言ってくれる。本当に嬉しかったです。」

大森さん(以下敬称略)「期待を裏切る良さ。最初の不安感を180度変えてくれる快適さです。ハンモック形状なのでグラグラするんじゃない?と思われがちですが、お湯が入ると床に底がくっつきます。そうなると今度はお尻が痛いんじゃない?と思うじゃないですか、でもお湯の浮力があるので浮遊感があって包み込まれるような、かつてない入浴体験を味わえるんですよ。入ってみないとわからない(笑)そこをどうやって体験してもらうのかが、今後の考えどころです。」

ハンモックのようなバスタブが提供する豊かさ

左から「ウィートベージュ」「クラウドホワイト」「ブリックレッド」「アクアブルー」「フォレストブラック」
―サラサラと気持ちのいい質感と、インテリアに融合するシックなカラーが素敵ですよね
長瀬「ファブリックバスは、コンパクトに畳めて狭小空間でも広いシャワールームと広い浴槽を切り替えられます。bathtope自体コンパクトな空間で収まるので、リノベーションなどの際には建築側に自由なスペースを提供できます。自分らしい暮らしを送りたいと考える層に寄り添う特徴は、それ以外にも色の選択肢があります。普通の固い浴槽だと8割以上の方が白を選ばれますが、ファブリックなので気軽にカラーを選んでいただけると考え、全5色展開としています。色は自然からイメージしたトーンとネーミングで、触感や入り心地については今村さんのこだわりがつまっています。」

今村「最初はもっとファブリックっぽいものでアパレルによせた質感でした。布のほかにもミシンや糸を買ってカタカタ縫って試作をしていました。ところが女性社員や肌が敏感な方から『ザラザラして痛い』などの声があがってきたので、そういった声とお湯を溜めるという機能面からサラサラの今の質感におさまりました。」

長瀬「従来の浴槽はFRP製でリサイクルが難しい素材ですが、ファブリックバスはリサイクルが可能な素材でできています。素材の特徴を生かして肌触りや入浴体験の心地よさを最優先しましたが、今後はその良さを保ちながらリサイクル素材などよりエコなものにシフトしていくことも考えています。」

新しい考え方に寄り添い、日本の入浴文化を次世代に継承

大森「ライフスタイルが多様化し入浴スタイルも変化、毎日浴槽に浸かる人は半数に留まるといいます。
昨今の間取りが厳しくなる中で、若い人には特にその影響が大きいわけですが、浴槽を外せばワークスペースやランドリールームとしても使用できる。そういったニッチな声に特化したアイテムをこれまで作ってこなかったということもあり、SNSやDESIGNARTなどのイベントを通して、感度の高い層の方へ選択肢として存在を広く知って頂けたら幸いです。」

長瀬「bathtopeが小さな一歩になれば嬉しいと思ってます。さらにその将来は浴室という空間ではないかもしれない。水もいろいろなカタチに変化できるので、粒径を細かくして湿度を感じたり、何かに溜めれば入浴できるし、人との接点はアイディア次第。その水の体験価値を進化させ“水と一緒に癒されるウェルビーングのための場所”が家にあったらいいですよね。そこから新しい入浴習慣が生まれ、入浴文化を豊かにしたいと思ってます。」
*11月26日(いい風呂の日)発売予定。

Text: Yoko Dobashi
Photo: Ryo Usami
SPECIAL MOVIE | bathtope by LIXIL

BRAND / CREATOR

LIXIL

LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。

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