INTERVIEWS

SPECIAL INTERVIEW | why work tokyo 制約とあそぶ 東京という働き方

ワークプレイスコンソーシアムの始動 東京独自の働き方、暮らし方の豊かさを問う

―本日は、ワークプレイスデザイナーコンソーシアム「why work tokyo」を立ち上げられた初期メンバー6社の皆さまにお集まりいただきました。 「働くとは何か」という問いから見える豊かな働き方・暮らし方を発信する共同体とのことですが、どのようなきっかけから構想されたのでしょうか?
dada株式会社 クリエイティブディレクター 野村大輔(以下敬称略)
日本のワークプレイスは、この15年でかなり成長してきました。参画者も増え、デザイン業界の中央に近づいた印象があります。一方、コロナ禍では「オフィスがなくなる」と言われる状況も経験しました。業界を意識することが増える中、素敵な人たちがつながれば、上質な業界をつくってグローバルに発信することもできると考えはじめたのがきっかけです。
SL&A Japan Inc. 代表取締役社長 北村紀子(以下敬称略)
競争相手でもあるワークプレイスデザイナー同士は横のつながりが少ないのですが、野村さんとはあるプロジェクトで知り合い、友人として構想を膨らませてきたことが今につながっています。

―コンソーシアムの目的についてお聞かせください。
CANUCH デザイナー / COO 野口優輔(以下敬称略)
情報、スキル、アイデアを集約して、アーカイブ化しながら発信したいと考えています。オフィスへの投資は10年前に比べて2倍3倍と増えていますが、結果を出さなければ業界は縮小されてしまう。次世代に知見をつなぐことも大切な役割です。
SIGNAL Inc. 徳田純一(以下敬称略)
業界の特性として、各事務所は小規模なので知見が貯まりにくく、ロングタームの案件を複数抱えることにも限界があります。各々が持つものを共有することで、業界全体のレベルアップを図れると感じています。

北村
多様な方と対話ができるといいですね。デザイナーは言葉もコンセプトも持っていますから、話を聞きたい方も多いはず。オフィスビルに入るのが誰で何を求めているか、どういう空間がよいかは、コモンの問いへ広げていくべきだと思っています。コンソーシアムなら、例えば、デベロッパーの方々との接点を広げることもできると感じていて、そこにも大きな存在意義があります。
オカムラ クリエイティブディレクター/デザインディレクター 松本祥昌(以下敬称略)
立ち上げにあたり、日本デザインセンターさんにクリエイティブディレクションとして参画いただき、川上俊さんはじめartlessさんにはロゴ・VIを制作いただきました。多くのクリエイターの皆様と思いを共有しながらご一緒できることが僕たちも楽しくて。これから、この場で生まれたものを世の中に発信できる。共感を集めるような、日本的なコンソーシアムになるといいなと思います。

70㎡で見せる「制約とあそび」とは リレー形式で変化する10日間のインスタレーション

―DESIGNART TOKYOが立ち上げイベントになられるのですね。どのような経緯でお選びいただいたのでしょうか?

野村
ちょっと面白いスタートで、コンソーシアムの運営方針を固める前に出展を決めました。展示に向けて話しながらコンソーシアム自体もつくり上げていきたいなと。わちゃわちゃと考えるがまさにワークプレイスっぽいし、いい形です。アートイベントの中に入っていくのもとても面白いです。
野口
“ワークプレイスデザイン”という言葉の認知度を上げる機会としても大きいですよね。僕は「この業界をボトムアップさせていこう」という皆さんの愛情に共感を持っていて、価値を感じてくださる方のパイを広げるためにも、イベント参加は活動のコアとして必要だなと思っています。

―10日間、6社の皆さんがリレー形式でインスタレーションをされるとのことですが、どのような展示を企画されていますか?
松本
70㎡ほどのスペースで、オカムラ製品でも採用しているクッション材「E-LOOP」を使います。同じテーマと素材にすることで、働く環境に対する各々の姿勢を表そうという企画です。日本の働く環境やデザインの特徴、ユニークなところを議論して、第一弾は「制約とあそび」というテーマを立ててみようと。実は、「why work tokyo」というコンソーシアム名もその流れから生まれました。
Canuch Inc. デザイナー/CEO 木下陽介(以下敬称略)
東京での設計は制約の連続で、世界に対しても有益な情報を発信できるのでは、という視点も見つかりました。大きなメディアをつくるような気持ちでコンテンツを考えていきたいねと話しています。

―それぞれの展示は、どのような発想から企画されているのでしょうか?

松本
家具メーカーであることはオカムラの特徴ですが、社内には働き方に関する研究所やコンサルティング部門もあり、多視点で考えることで働く・暮らすの豊かさを獲得できないか、と常々考えてます。僕たちは、立つ位置によって壁に見えたり柱に見えたり、多視点を体感できる展示を用意しています。

野村
制約の中でたくさんの予見が与えられるのもオフィスの特徴で、混沌化した予見をデザインで整理することが、ワークプレイスデザイナーの魅せどころかなと思っています。今回は、人がふれることでつながりが生まれる、変化していくような展示を考えています。

北村
あそびを大切にする、というステートメントを出したいです。制約とあそびのバランスがあってこそ、経済活動の循環が回りますよね。制約は人間活動に重要だというスタンドポイントに立って、人が動くと揺れる薄葉紙とE-LOOPの対比で、人のエネルギーが集まって有機的な生成活動がはじまる雰囲気を伝えられたらと思います。

木下
場に来た人との相互関係でつくられる、フレキシブルなものをやってみたいなと。日本の労働時間の推移を探ると、生き方や働き方を取捨選択して、自分の居場所をつくろうとする思考が強くなっているという発見がありました。パッキングしたE-LOOPの使い方を問いかけ、どういう化学反応が起きるか見てみたいです。
SAKUMAESHIMA 前嶋章太郎(以下敬称略)
最近、業務の半分ほどがワークプレイスなのですが、なぜかというと公共性を感じてすごく面白いんです。今回の会場は1㎡に1人とすると70人が集まれる空間。あえて邪魔なものを置き人数をコントロールしながら、1人ひとりは環境よく過ごせる展示をやろうかなと。逆説的ですが、制約から生まれてくる豊かさってありそうです。

徳田
うちは常日頃からロケーションと人との距離感を大事にしていて、場のポテンシャルを最大限活かしたいと思っています。E-LOOPで山のようなものをつくり、内側と外側に多様な場所をつくることを考えています。作業に集中できたり、コミュニケーションを取ったり…。その快適性を高めることにチャレンジします。


―展示終了後には、どのような活動を予定していらっしゃいますか?

前嶋
内装、インテリアデザイン、建築の中でも、オフィスってすごくクローズドですよね。完成してから見られる機会は非常に少ないので、僕たちが物件を見に行って、参加者と一緒に対話するツアーも面白そうだなと思っています。
SL&A Japan Inc. デザインマネージャー 八巻祐大
働くことや空間デザインについて語れる人が揃っているので、勉強会もぜひ開催したいです。働く場はお店にも屋外にもある。オフィス以外の環境にも目を向けると、空間デザインにも新しい発見があるのではと最近感じています。
Okamura デザインディレクター/デザイナー 吉田直人
働くという切り口で活動の場を拡張していくということができれば、日本や社会をよりよくしていくことにさらに広く関わっていけそうです。

木下
日本のワークプレイスのアイデンティティを形づくるような動きができるといいですよね。コスト、環境、法律といった制約の突破口を探しながら、コロナ禍のように社会が一変する場面でも、最前線で課題に取り組むコンソーシアム。日本が誇る産業として、スケールアップできる流れをつくりたいです。

―最後に、コンソーシアムの今後に向けて、今回の展示にどのようなことを期待されていますか?

徳田
まずは、コンソーシアムと、それぞれの事務所を知ってもらえるとうれしいです。そこからコミュニティをつくって、例えば予算交渉など、業界のレベルアップを目指して一つの塊として行動していける共同体に育てたいです。

野口
事例写真を見るだけでは、課題の解決方法やデザイナーの思いまではなかなか伝わりません。僕たちが知っている背景をわいわいとシェアしている光景を発信できるといいなと思います。職場をつくる人たち自身が楽しんでいると、一番熱量を感じてもらえそうですよね。

野村
この先、業界の人やオフィスをつくる人も参加できるプラットフォームをつくっていきたいと思っています。その一歩目のイベントとして、展示を通してワークプレイスをデザインする価値や楽しさを感じていただけることを願っています。

photo: Takuya Yamauchi
text: Aika Kunihiro
DESIGNART TOKYO 2024 SPECIAL INTERVIEW | why work tokyo 制約とあそぶ 東京という働き方

BRAND / CREATOR

OKAMURA

オフィス、共創空間、シェアオフィス、ワーケーション施設など、多彩な働く環境をデザイン。社内のリサーチャー、コンサルタント、共創マネージャーや、社外のコラボレーターと共に、枠を越えて、本質の発見を行い、豊かな体験づくりに取り組む。

https://okamura.design/experience/

SL&A JAPAN

1972年に香港で設立されアジア太平洋8つの地域で建築インテリアデザイン業務を展開するSteven Leach Group。東京オフィスはコーポレートオフィスのインテリアデザインを専門とする設計事務所。ワークプレイスデザイナーは対話こそが最も大事という考えのもと、日々ワークプレイスの新たな可能性を追求している。

https://www.sla-group.com/offices/tokyo

dada

東京を拠点に2019年、野村大輔により設立したインテリア設計事務所。ワークプレイスの豊かな働きをデザインし、コミュニティと共創する。有機的な繋りをもつデザイン・コンストラクションチームと共に、空間を創造構築する。地方生産者と東京の空間をエクスペリエンスでつなぐ、循環型環境モデルに取り組む

https://www.dada-jz.jp/

SIGNAL

「伝えたくなるデザインをつくる」をテーマに東京を拠点に活動するデザインスタジオ。ショップ、オフィス、飲食を中心としたインテリアや、家具をはじめとするプロダクトの他、グラフィック、イベント企画などを手掛ける。主なプロジェクトにアマゾンジャパン品川オフィス、レッドブルジャパン本社など。

https://signal-inc.co.jp/

SAKUMAESHIMA

東京の原宿を拠点に2016年に設立した、朔 永吉と前嶋 章太郎の共同主宰による建築設計事務所。住宅や商業施設などの建築設計、オフィス・店舗等の内装設計、 展覧会の会場構成、プロダクトデザインなど、コラボレーションを大切にプロジェクトに取り組んでいる。

https://sakumaeshima.com/

Canuch

東京を拠点とするデザインコレクティブ。人と物との関係性の探求を起点とし、空間デザイン、プロダクトデザイン、マテリアル開発など多様なプロジェクトに参画。代表的な事例に、株式会社ルミネ社オフィス、鎌倉紅谷本店、Gamefreak社オフィスやFILの「MASS Series」の家具等。

https://canuch.com/
loading logo loading logo