INTERVIEWS
SPECIAL INTERVIEW | 進藤篤 × REMARE ×乃村工藝社
DESIGNART GALLERYで注目のインスタレーション
廃棄されるゴミが光り輝くたからものに
エスコルテ青山にて開催する「DESIGNART GALLERY」では、デンマーク・コペンハーゲンの家具ブランド・Muuto(ムート)の国内初のポップアップストアがお目見え。そこにグエナエル・ニコラ、パトリシア・ウルキオラが手がけるMOROSO(モローゾ)、Paola Lenti(パオラレンティ)、Ambientec(アンビエンテック)、RECONC 、h220430 Satoshi Itasaka、Denis Guidone x Y.S.M、Tokio.、AMUAMI(編阿弥)、Original Kolor Design、WASARAなど、国内外の最先端のクリエイションも一堂に会する。
この「DESIGNART GALLERY」全体の空間構成を手がけたのはデザイナー・アーティストの進藤篤だ。
進藤はどのように展示を見せていくかを検討する際、新型コロナウィルス感染症対策の一環で一気に広がった飛沫防止用のパーテーションを再利用し、インスタレーションへ展開することを思いついた。
DESIGNART GALLERYの空間デザインを担当する進藤 篤驚きの変容を魅せるアクリルパーテーション
「今回のDESIGNART全体のテーマは『Sparks 〜思考の解放〜』。このテーマに寄り添うような形で、これまで閉ざされていた世界が次のステップに向けて動いていく──そんな時代の変化を象徴的に表せるようなマテリアルが何かないかと考え、この数年、人々を物理的に遮断していたアクリルパーテーションが重要なマテリアルになるのではと考えました。パーテーションの多くが焼却廃棄されている現状を知り、それを新たな形で蘇らせることで、パンデミックを経た私たちのこれまでと、これからの生活に思いを馳せてもらえたらと思っています。」(進藤)
そこで、かねてより素材のアップサイクルをコーディネートしてきた後藤慶久(乃村工藝社)とともに、プラスチックのアップサイクルを行う間瀬雅介(REMARE)に声をかけ、廃棄寸前のアクリルパーテーションから、全く新しい質感のアクリル板を開発することに成功した。
乃村工藝社のソーシャルグッド活動を推進する後藤慶久間瀬は海洋調査船の航海士という異色の経歴を持つ。海で実際に目にした海洋ゴミの山に衝撃を受け、海洋プラスチックを集めて再生・加工する事業を数年前に立ち上げた。間瀬によると、一見、透明で均質な素材に見えるアクリルパーテーションでも、その製造方法、メーカー、素材の分子量など細かな違いによって品質はかなり異なるため、たとえ大手メーカーであっても再生しにくい現状があるという。
海洋ゴミを資源として好循環させるRAMALEの間瀬雅介小ロットだからこそ追求できる芸術性
ベンチャーであるREMAREでは、生成機を自分たちで開発し、均質ではない素材であっても小ロットで再生させることで、他にはない独自のプロダクト開発を可能としてきた。今回、天板の素材となったのは乃村工藝社の社内で実際に使われてきた数千枚のアクリルパーテーション。同社は、空間創造のプロフェッショナルとして、これまでも廃棄をできるだけ少なくするための取り組みを積極的に行ってきたが、コロナ禍に職場で使用したパーテーションを一箇所に集め、そのリサイクルをどうするか、まさに検討していたところだった。
REMAREは、これら廃パーテーションの「均質でないアクリル素材」をいったん全てフレーク状にし、それを独自の形状で盛ったうえに熱プレス成形し定着させる方法でいくつもの試作を重ね、乳白色の独特の質感を持つオリジナルのアクリル板を生み出した。一見するとアクリルのようには見えないマットな質感で、建材としても十分通用しそうな美しさを感じる。
廃棄されるアクリルパーテーションの破片をプレスしてつくられた天板廃パーテーションの積層の上に新たに生まれ変わったアクリル板を載せた什器は、いわばマテリアルの「過去と未来」を体現した存在だ。空間をやわらかく区切るリサイクルアクリルパーテーションとともに、国内外のデザインアイテムを効果的に見せていく。ぜひ会期中に、このアップサイクルで彩られた空間を体感しにきてほしい。
「DESIGNART GALLERY」の場所は、来年、インターオフィスによる新たなインテリア空間としてオープン予定。今後さらに注目していきたいスポットだ。
インタビュー会場となった乃村工藝社本社のRESET SPACE_2(リセットスペース2)DESIGNART GALLERY 開催概要
会期:2023年10月20日(金)〜29日(日)
会場:エスコルテ青山
東京都港区北青山2-7-15
営業時間:11:00〜19:00(20日のみ18:00まで)
Text:Keiko Kusano
Photo:Naoki Miyashita
BRAND / CREATOR
進藤 篤
1991年生まれ。東京藝術大学大学院デザイン専攻課程修了。インテリアデザイナーとしてホテル・オフィス・商業空間等のデザインに携わる。個人プロジェクトでは、より無垢な眼差しを起点に、空間・インテリアオブジェクト・アート作品等、多岐にわたる作品を発表。空間的視点を軸に、生活に密接する事柄や素材の可能性を見つめ直し、それらを緩やかに紡いでいくことで、新たな価値観と根源的な美を探る活動を行う。
https://www.atsushishindo.com
株式会社乃村工藝社
乃村⼯藝社は、商業施設、ホテル、企業PR施設、ワークプレイス、博覧会、博物館などの企画、デザイン、設計、施⼯から運営管理までを⼿掛ける空間の総合プロデュース企業です。グループ全体では、全国9拠点・海外8拠点、国内外6つのグループ会社で事業展開しています。 1892年(明治25年)から培ってきた総合⼒を活かし、フィジカルとバーチャルを融合させた空間価値の提供で、⼈びとに「歓びと感動」をお届けしています。近年は、持続可能な社会を実現するため、事業活動を通して幸せなインパクトを生み出す「ソーシャルグッド活動」を推進しています。
https://www.nomurakougei.co.jp/
間瀬 雅介
元航海士&機関士。航行歴:日本沿岸〜南極海 人生の理念は「地球の7割 (=海) を遊び場に変える」。 航海士時代、フィリピン海に浮かぶ大量の海洋ゴミを見て、 「人工物を地球上にどのように存在させ、循環させればよいのか?」という問いを抱く。 一度海に出たプラスチックを、すべて回収するのは難しい。 それでも、生活の中で必要不可欠なプラスチックを 産業構造の変革で新たな素材として循環させるべく 株式会社REMARE創業。
https://www.remarematerial.com/