アイ アム ネイチャー / キュリオシティ クラウド

オーストリアのデザインデュオ、ミシャー’トラクスラーは、プロダクトやインスタレーションなどをクラフトベースのアプローチでデザインし、そこにテクノロジーも融合させています。15年近くにわたり、彼らは「自然」を作品の中心とし続けています。2015年に、彼らはメゾン ペリエ ジュエのために、「キュリオシティ クラウド」を制作。その作品は人間と自然との関係、特に人間の活動がバイオダイバーシティー（生物多様性）に与える影響を追求したものです。キュリオシティ クラウドは木を表現したアート作品で、たくさんの透明なグラスバルブが吊り下げられています。そのバルブの中にはハンドクラフトされた昆虫のレプリカが入っており、人が近づくと動き出す仕様となっています。その昆虫たちの種類をよく見ると、誰もが知るものもあれば、最近発見されたもの、絶滅の危機に瀕しているもの、あるいは侵略的外来種と呼ばれるもの存在しています。絶滅から新種の再発見までの生命のサイクルを強調したこのインスタレーションの中には、すべての種が共存しているのです。
2021年、再びミシャー’トラクスラーはペリエ ジュエと共に「人間と自然との間の相互作用」というテーマをさらに探求していくこととなりました。メゾン ペリエ ジュエとの今期のクリエイティブ・コラボレーションの要となるのが、DESIGNART TOKYOで世界初公開となるインスタレーション「I am Nature」です。彼らにとって「I am Nature」はアート作品であるとともに、感動的な体験でもあります。約150種類もの生物を表現したこの作品は、バイオダイバーシティーの中に存在する人間の位置にスポットを当てています。バイオダイバーシティーは、植物、花、鳥といった目に見えるものから始まり、地上では小さな種、そして肉眼では見えない地中の微生物やバクテリアまで、さまざまな種が存在します。このインスタレーションでは、生態系における役割の平等性を強調するために、すべての種が同じスケールで表現されています。鏡の前に立つと、その人の姿は消え、代わりに様々な植物や生物によってかたどられた「自然の姿（I am Nature）」が現れます。まさに、バイオダイバーシティーというコンセプトを体感できる作品といえるでしょう。