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Metamorphosis Garden 2021 mixed media dimensions variable Installation view, “Kohei Nawa – Metamorphosis Garden“, Tokyo, Japan
INFORMATION
Metamorphosis Garden(変容の庭)
彫刻家名和晃平による、生命と物質、あるいはその境界にある曖昧なものが共存する世界をテーマにしたインスタレーション「Metamorphosis Garden(変容の庭)」。瀬戸内海・犬島の《 Biota(Fauna/Flora)》(2013)のインスタレーションの発展形として、混沌から生じる新たな物語を表現した作品です。不定形の島々と雫、そこに立ち上がる生命の象徴としての“Ether”と“Trans-Deer”。アルミナとマイクロビーズの粒で覆われた彫刻群が吹き抜け空間に浮かぶ。そこに、振付家ダミアン・ジャレとの共作によるARのパフォーマンスが展開し、絶えず変容する世界がリアルな物体とARのイメージとして重なり合います。
Autumn 「ROOT」
⼟壌根圏にフォーカスし、地中に華やかに力強く広がる根と根菜、そして、地中とヒトの体内にともに広がる微⽣物の世界がテーマです。
植物の根は、地上の茎や葉を⽀える土台でありつつ、生育に必要なリン酸などの栄養分や⽔分を吸収して地上部に送る重要な役目を持ちます。根がその役目を果せるのは、地中に豊かな微⽣物による⼟壌根圏が存在し、微生物が栄養分や水分を吸収して植物に供給するからです。
ヒトの体内にも同様の微⽣物叢が存在します。ヒトマイクロバイオームや、フローラと呼ばれ、健康状態と密接に関連しているとされ、健康のために微生物叢の構成するカビや酵母といった真菌による発酵食品を摂取する機会も増えています。
食のラグジュアリーとは、ヒトの体内の微生物のために、優れた宿主として微⽣物叢のバランスを保って生きる、目に見えない極小の世界との豊かに共存することなのかもしれません。
アニメーションのために、フランス在住のアーティスト、田中麻記子氏をゲストにお迎えしました。身の周りに実在する食物などのモチーフを、架空の風景や事象として表現することを探究する田中氏。今回描き下ろしの2編『土の中のテアトル~Théâtre de la terre ~』、『Sleeping Beauty』は、持ち味であるポップで浮遊感のある作風で、⼟壌根圏をファンタジックに彩ります。枝に巻いた糸はウコンとビーツで染色し、根や根毛に見立てディスプレイしました。
Metamorphosis Garden 2021 mixed media dimensions variable Installation view, “Kohei Nawa – Metamorphosis Garden“, Tokyo, Japan
Metamorphosis Garden 2021 mixed media dimensions variable Installation view, “Kohei Nawa – Metamorphosis Garden“, Tokyo, Japan
1975年生まれ。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。2009年「Sandwich」を創設。感覚に接続するインターフェイスとして、彫刻の「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸として、2002年に情報化時代を象徴する「PixCell」を発表。近年では、アートパビリオン「洸庭」など、建築のプロジェクトも手がける。2018年にフランス・ルーヴル美術館ピラミッド内にて彫刻作品“Throne”を特別展示。
開業以来、GINZA SIX B2Fのフードフロアで季節ごとに独自の世界を表現してきた、食を題材にした、商品を入れないウィンドウアート。毎回のウィンドウを手掛けるPranks Inc.の佐藤寧子は、この秋『ROOT』と題し「⼟壌根圏」にフォーカス。地中に広がる根と根菜、そして、地中とヒトの体内にともに広がる微⽣物の世界を表現した。根が栄養分や⽔分を地上部に送る重要な役目を果たせるのは、土壌の中の豊かな微⽣物叢の存在によるもので、同様の微⽣物叢はヒトの体内にも存在する。自分の体内の微生物叢をイメージし、そのバランスを良好に保つための「食生活」を意識するように、肉眼では見えない秘められたミクロコスモスを意識するための、もう一つの地下空間を館内の地下に作った。広がる根と、根毛に見立ててビーツとターメリックで染色した糸との間に投影されるのは、身の周りに実在する食物などのモチーフを架空の風景や事象として表現することを探究する画家、田中麻記子が手がけたアニメーション、『土の中のテアトル〜Théâtre de la terre 〜』と『Sleeping Beauty』の2編。持ち味であるポップで浮遊感のある作風は、地中や体内で起きているストーリーを、独特の感性で想起させる。
画家。1975年東京生まれ、フランス在住。水彩、油彩、パステル、鉛筆、セラミックを中心に作品を発表。デッサン集『La collection gastronomique』(HeHe/ヒヒ)、ピエール・エルメ・パリ 青山のシンボル「Macaron Baby」のデザイン、資生堂「花椿」Web版でコラムを連載する等、アートシーンに留まらない活動で注目を集める。
photo ©Takeshi Miyamoto