坐忘
展示会場はK Furnitureのデザイナーである黒川雅之の設計事務所。地下階にありながら外光の差し込む開放的なフロア。
その空間の主役は「椅子」です。
「椅子に座れば、人は『休息と創作』を始めます。椅子は休息のためだけではなく、休息しながら連続的に、思索し創作する道具だからです。椅子で創作が始まると、それを助けるためのテーブルやデスクが必要になります。椅子のお供のようにこれらの『作業台』が生まれます。そして、それらがあればその周りに人が集まったり物が溢れたりします。こうしていろいろな家具が登場するのです。でも、初めは椅子です。ここから僕たちは始めました」建築家 黒川雅之が発想する家具「K Furniture」は、こうして椅子からスタートしたのです。
座りいい椅子とは休息できる椅子ではなく、思索し創作がしやすい椅子のことです。そのため、これらの椅子は「腰椎」で背を支えるように設計しています。また、すべて一種類のスティールの脚を用いています。共通化によってコストを削減するためでもありますが、椅子は基本的には高さが確保されればいいのであり、多様な椅子が共存しやすいからです。また、「脚の部品」と「座と背」と「アーム」などを簡単に素人でも組み立てることのできるように設計してあります。輸送コストを削減できますし、様々なオンラインショップなど流通で販売しやすいからです。これらの椅子はすべて原型的なデザインです。椅子もテーブルも、住宅やオフィスや公共建築など、どんな施設でも調和します。「休息と創作」はどこでも行われているからです。
黒川の思索や思想が詰まった家具を、その思想の醸成の場であるスタジオに展示します。見て触れて座って、空間ごと体感できる展示です。デザインの深層部に潜む原型を探る手法や手口を次世代に伝えることをライフワークとする黒川雅之の活動のひとつでもあります。
価格帯: ¥30,000-200,000